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蔵前仁一
新ゴーゴー・アジア(上)
定価:本体価格1600円+税
(税込価格1728円)




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購入方法

蔵前仁一
新ゴーゴー・アジア(下)
定価:本体価格1600円+税
(税込価格1728円)

解説
旅行人の本
季刊『旅行人』




『新ゴーゴー・アジア』まえがき

 アジアをわたる旅。かつてこの言葉には大いなる輝きがあったが、最近はもう少しも珍しくなく、ありふれたものになっている。それはアジアへ向かう旅行者 が急激に増加し、そしてアジアと名のついた旅行記が山ほど出版された結果であろう。「猿岩石」なんてのもいたかな。
 本書も『新ゴーゴー・アジア』である。なんだ、またこんな本が出たのかとお思いの読者も多いことだろう。貧乏自慢、冒険自慢のバックパッカーが、下手な文章で何の役にも立たないことを書き散らした旅行記かよ、とお感じの方もいらっしゃるかもしれない。
 そうではない!(とはいい切れない)んだが、実はこの本、今ほどバックパッカーがメジャーでなかった頃に出版され、このたびリニューアルした旅行記なの である。だから「新」という文字が頭についている。『ゴーゴー・アジア』の初版(凱風社刊)は一九八八年に出たから、実に一五年前のことになる。それ以降 も僕はアジアへの旅を繰り返しており、この新版は、初版にその後の旅を加えたものになっている。例えば、旅行者がようやく入れるようになった頃の中国の様 子や、まだ団体旅行しか許されていなかった頃のカンボジアの旅から、国境が開いたばかりのラオス、あるいはごく最近のインドやバングラデシュの旅までをこ の本に収録した。

  バックパッカーと呼ばれる個人旅行者が、アジアを盛んに訪れるようになったのは、一九八〇年代に入ってからのことである。もちろんそれ以前にもアジアを旅 する旅行者はいたが、急激な増加を見せるようになったのは、円が強くなり、安い航空券が一般的にひろく出回るようになった一九八〇年代になってからであ る。僕もその波に乗ってリュックを担いでアジアへ旅立ったのだ。その意味では、ブームになったアジア旅行の初期から現在までの様子をこの本が伝えているこ とになると思う。
 この一九年を眺めてみると、アジアの旅行事情は激しく変化している。何を頼んでも「ない」と拒否された「没有」の国の中国がどしどしと経済発展して、な んだか資本主義の国みたいになり、インドシナ半島の国々は次々と陸路国境を開いて、旅の自由度がぐっと広がった。カンボジアでは内戦が終結し、さらにベト ナムなどは日本の女性雑誌がグルメとショッピングの特集を組んで、若い女性たちがおしかけるようにさえなった。実にめまぐるしい変化であり、それは現在も まだ継続中である。



  テレビや雑誌などでよく見かけるので、アジアの旅など珍しくないと思っても、初めてアジアに出る人には、実際の旅がどのようなものになるのかなかなかわか らない。それにアジアと一口でいっても韓国とトルコでは同じアジアであるとはとてもいえないから、韓国を旅した経験があっても、当然のことながらトルコを 同じように旅できるわけではない。現在の模様もできるだけ付け加えたので、アジアの東から西までの旅の様子を、この本でざっと見渡していただければ幸いで ある。だからといってそれがただちに旅に役立つわけではないが、まあこういうふうに旅してる奴もいるんだな、この程度だったら自分にもできるんじゃないか と思っていただければ、間接的に役に立ったことになるかもしれない。




ホーチミン/2002年

  今さらいうまでもないことだが、アジアを旅行するのに特別な技術や強靱な体力が必要なわけではない。ガイドブックでも読んで、ある程度の金と時間と常識さ えあれば誰にでもできるのである。いや、初心者にはバックパッカー旅行なんて無理だよという人もいる。もちろん無理な人もいるだろう。だが、今や年間一七 〇〇万人もの人々が海外旅行に出る時代である。初めてバックパッカーとして海外旅行する人だって数十万人はいるだろう。それぐらい多くの人が海外に出て、 ほとんど全員がたいしたトラブルもなく帰国してくるのだから、誰でもできると考えるのが常識である。
 もちろん、誰にでもできるからといって、それがつまらないということにはならない。おもしろい旅になるか退屈な旅になるかは旅するその人次第である。僕 自身の経験からいわせていただくと、これほどおもしろいことはちょっとない。本当に本当に旅はおもしろい。おもしろすぎて困っている。現在僕がなかなか自 由に旅できる状態にないからだ。一度知ったらやめられない麻薬的なおもしろさが旅にはあり、それで抜けられなくて困っている人もかなり大勢いる。それもす べて本人次第である。
 というわけで、この本でとりあえず僕のアジア旅を楽しんでいただきたい。一九年分なので上下二冊の長編になってしまったが、著者としては、実際の旅と同じように、おもしろくて退屈しない「本の旅」になることを心から祈っている

二〇〇三年一月   蔵前仁一