旅の虫眼鏡

¥1,540 (税込) 本体価格:¥1,400

アジアやアフリカの路上で出会った
さまざまな昆虫や動物や植物
そのひとつひとつの生きものたちの小さな物語を
イラストとともに綴った虫眼鏡的エッセイ集です。

残部僅少。本書に帯はありません。カバーに傷がありますのでご了承の上、お買い求めください。

商品コード: mushimegane-itohiro カテゴリー: , タグ: , , ,

蔵前仁一
定価:本体1800円+税(税込価格1944円)
A5判296ページ(カラー80ページ)
ISBN978-4-947702-72-2 C0026

本書で旅する国々

バルカンとコーカサスへ 蔵前仁一

 この本は、僕が旅をしたバルカン諸国と南コーカサスの旅行記である。
 バルカン諸国は東ローマ帝国とオスマン帝国の支配下にあった歴史があり、南コーカサスの国々もまた同じようにセルジュク朝やオスマン帝国、あるいは東ローマ帝国の支配下に入った歴史を持つ。だから、これらの地域のほとんどはイスラームと東方正教の世界だ。
 そして、ギリシャを除いて冷戦時に社会主義国でもあった。冷戦構造が終結してから20年以上たつが、これらの地域が社会主義から市場経済へと移行すると、コーカサスの国々の中からはロシア離れが進んでヨーロッパに接近しようとする国も現れる。バルカン諸国ではユーゴスラビア紛争を経てEU加盟を果たす国も現れた。
 僕はこれまでおもにアジア、中東、アフリカなどを旅してきたが、ずっとこういったところを旅できないでいた。南コーカサスは長らくソ連邦の一員で旅ができなかった。旅ができるようになったのは、ソ連が崩壊した1990年以降である。それからこの地域では紛争が続き、すぐに旅ができるという状況になかった。そして、バルカン諸国ではご存知のようにユーゴスラビア紛争が起きた。
 はたして、コーカサスの国々とはいったいどういうところなのか、そしてユーゴ紛争後のバルカン諸国はどうなっているか。本書をお読みいただければと思う。

第1章 バルカンの花

バルカンはどこにある?/ザグレブの退屈/アドリア海沿岸の明るすぎる町/銃弾の跡──ボ スニア・ヘルツェゴビナ/サラエボのイスラーム/サラエボのトンネル/サラエボの花/山を越えてモンテネグロへ/小さな国の産業/絶景かなコトル湾/謎の 国アルバニア/アドベンチャーな山の旅/天国を歩く/コソボ経由ティラナ行き/ヨーロッパの最貧国/千の窓の町/石の町/血讐の掟/マケドニアへ/銅像の 大都会/緊張のセルビア入国/キリムの町/イスラームの町ノビ・パザル/修道院のフレスコ画/大都会ベオグラード/美しいアールヌーヴォー建築/セルビア は「悪者」だったのか/バルカンの旅を終えて


第2章 ルーマニア田舎紀行──もう一つのバルカン

ヨーロッパ最後の中世へ/ブカレスト/チャウシェスクの遺産「国民の館」/農村博物館の半地下住居/モルドヴァの修道院/ホテルのオーナー兼ドライバーとの話/平均時速三〇キロのスロートレイン/ルーマニアのヒッチハイク/マラムレシュの教会を巡る/バイア・マーレから田舎の村へ/都会の香りクルージュ=ナポカ/ロマの宮殿/セーケイ人の町/お釣りが多い/雨のブラショフ/華麗なるマノレ修道院/ブランクーシの作品群/半地下住居はどこにある?/列車を乗り間違える/革命発祥の街ティミショアラ/ルーマニア旅行の醍醐味

第3章 コーカサスの虹

またもや謎の地域コーカサス/コーカサスのモダンシティ/コーカサスの山々へ/鍛冶の音が響く村 /隊商宿のホテルで眠る/グルジア入国/洞窟の修道院/多民族都市トビリシ/グルジア軍道を北へ /アルメニアの首都エレバン/聖なる山アララト/エレバン近郊を見てまわる/崖の上の修道院 /コーカサスのいちばん長い旅/南オセチア紛争とアブハジア問題/ゲラティ修道院/塔の家の立つ村 /ウシュグリの虹/旅の終わり/トルコ入国

 

追加情報

サイズ 296 mm

立ち読み

まえがき

ナイロビで自炊生活をしたとき、食材を求めに市場へ出かけて驚いた。ダイコンがあるのだ。そのほかにも日本で見たような野菜がたくさんある。いや、正確に 言うと日本で見る野菜ばかりだ。見たこともない野菜やくだものを期待していたのに、ちょっと拍子抜けした。と同時に、遠く離れて人種や文化も違う日本とケ ニアが、似たような食材を通して身近に感じたことも確かだった。
よく見れば、ホテルの中庭では、これまた日本と同じようにカラスがゴミをあさっていた。ダイコンといいカラスといい、まるで日本と変わらないじゃないか と眺めていると、そのカラスがちょっと違うのに気づいた。胸と首の後が白い、白黒カラスである。それがカーカーと鳴いているのだ。不思議な感じだ。日本に 帰ってから調べてみたいと思った。
白黒カラスはムナジロガラスという、もちろん日本にはいないカラスだった。やはり日本とケニアはなにげなく違うのだ。と納得していたら、ダイコンもだった。
日本のダイコンとケニアのダイコンはグループが違う。西アジアをスタートしたダイコンの仲間は、長い時間の果てに、日本、中国、ヨーロッパと大きく三つ の仲間にわかれた。ナイロビのダイコンはヨーロッパ系のからしダイコンの流れをくみ、日本の太くて大きなダイコンとは別物だった。ダイコンよお前もか、と いう感じである。
地球は一家、人類は皆兄弟というが、どうやら人類以外の生きものはそれほど単純な家族構成にはなっていないようである。やはり世界は広い。人間のように、さまざまな地域に適応できる生物のほうが圧倒的に少ないのだ。
それならばひとつ、身近な生きものたちをかたっぱしから調査してみよう。「身近な生きもの海外調査探険報告」である。
それによると、トマトはわずか150年前までは有毒植物といわれ、北欧で食べる者はだれもいなかったという。ほほう。
世界一の紅茶生産国であるインドの国民的飲料「チャイ」には、たかだか100年ほどの歴史しかない。へえー知らなかった。
ナメクジは殻の退化したカタツムリで、もともと貝の仲間である。なんとまあ。
なんだか、身近な生きものの近辺も意外なほどおもしろい。ここはひとつ、ずるずる調査を続けてみるべきではないだろうか。
街角や道端で、市場や動物園で、ホテルや食堂、バスや列車の窓から……。こうして、冒険でも自慢でもなんでもないただの観光旅行のあいだ、だれもが普通 に見ることのできる100の生きものを観察した。路上観察だから珍しいものはあまりないのだが、一見ありふれたものこそ油断禁物である。虫眼鏡でのぞくよ うに、ひとつひとつに焦点を合わせてみると、それらにはみな興味深い話が隠されていたのだ。
まずはあなたもアジア・アフリカの路上に立って、じっくりとまわりを見渡してほしい。ネコがいる。イヌが寝ている。木陰にサルが繋がれている。木の上には、なにやら果物がぶらさがっている。ジュース売りがいる。屋台も出ている。野菜の露店もある。
それでは、調査開始だ。最初はどこからにしよう。
この本ならどこからでもどうぞ。

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伊藤博幸 著

2000年9月発売

【登場する生きもの】
ナマコ
マレーグマ
ジャックフルーツ
イヌ/パクチー
パイナップル
チョウ
カバ
ワニ
ニワトリ
ドリアン
パパイヤ
ツバメ
サトウキビ
マンゴー
ホーイ・ラーイ
ナンキンムシ
チョムプー
ササゲ
クウシンサイ
タピオカ
ソム
ゴキブリ
ウミガメ
ヘビ
ハエ
カカオ
マンゴスチン
  

ロブスター
カタツムリ
ゴム
サル
ランブータン
バジル
キリン
トピ・ダマリスクス
シマウマ
ナメクジ
ライオン
ビンロウ
イボイノシシ
カブトムシ
インパラ
バオバブ
ハマダラカ
ハリセンボン
ドードー
ココナツ
ホラガイ
タコ
コーヒー
サバンナモンキー
ティラピア
カラス
他多数

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